 |
|
 |
|
ホテル・チェルシー
|
|
|
タイムズスクエアのカフェで日本から来た友人としばらく話し込んでいたら、
思いがけず時間を過ごしてしまったみたいで私は時計を見つつ急いだふりをしな
がら日本から来た友人を見送りアパートメントへの帰路についた。
私が住んでいるアパートメントはチェルシーにあって、乗り物を使えばあっと
いう間なんだけどタイムズスクエアからだったら十五分もあれば余裕で歩いて帰
れるから、無駄な出費は控える意味でも徒歩にしている。
たぶん、一昔前だったら私はタイムズスクエア周辺を歩いていただけでどうなっ
ていたかわからない。こんな東洋人の女に人権などないにひとしい場所だったか
らだ。
でも、今は夜でも安心して歩くことが出来るし、歩いてチェルシー地区まで帰る
ことが出来る。
私が住んでいるアパートメントは、ニューヨークのランドマークみたいになっ
ているホテル・チェルシーだ。
ニューヨークの中でも年代物の建物で、百十数年の物件だから相当ボロいんだけ
どゴシックな様式の重厚感のある建物は、歴史のシンボルみたいでよいと思う。
ホテル・チェルシーはアパートメントホテルで、賃貸と宿泊向けの部屋が半々に
なっていて私が住んでいるのは賃貸のほう。
アーティストとか役者とかミュージシャンとか建築家とかヨガのインストラク
ターとか社会的にいえば変な種類の人間の巣窟だ。
私はモデルだから充分に変な要素は満たしているかも知れない。
ホテル・チェルシーに住むようになったのは、ニューヨークでの滞在コストを抑
えたかったことや、実際にこっちに長期の居住が可能な身分になったので、住ん
だ方が良いと思ったからだ。
それまでは日本とこっちを往復していて、主にニューヨークにいるときはセン
トラルパーク近辺の高いホテルに滞在をしていたけど、たまたまこっちで知り合
った日本で役者をしているという若い男に誘われ彼のアパートメントを訪ねたの
がきっかけで、彼が借りていたアパートメントがホテル・チェルシーだった。
彼は末武龍之介という日本の若手の役者で、日本に恋人を置いてニューヨーク
で色々なことに取り組んでいると当時の私に言っていた。
実際、彼はカメラをぶら下げ写真家気取りだった。
ホテル・チェルシーは特に絵描きや写真家が多くて、館内に色々と作品が飾られ
ているけど、アーティスト割引みたいなものがあるらしくて更に賃貸契約をする
とコストパフォーマンスも良いとかで、アパートメントとして借りていた。
私が住んでいるのは彼の部屋だ。正しくは彼が住んでいた部屋で、私はしばらく
彼と同居していたけど、突然彼は必ず戻ると言って姿をくらませてしまった。
彼が戻る日まで、私が彼の代わりに住んで部屋をキープし続けて欲しいとい
う、微妙な頼みを断り切れなかったのは、不便で古めかしいホテル・チェルシー
が気に入ってしまったからかも知れない。
私はモデルとして、それなりに世界中で仕事をさせてもらっていて、特にヨーロ
ッパが多いんだけど、フランス、イタリア、ドイツ、イギリス、大好きな街ばか
りでアメリカはそれらとはあまりに異なっているけど、でもホテル・チェルシー
の古さやそれがもつアートへのこだわりは何となく共通している気がして、気を
許せたのかも知れない。
私はフェティッシュな嗜好が強いから、フェティッシュさにも惹かれるものが
あり、同時にチェルシー地区はゲイタウンでもあった。
パリのピガール周辺とは全然異なるカルチャーだけど、以前にあの辺りにも住ん
でいたから、男同士のカップルとかは見慣れている。
アートと性と変態性は共通だ。それは狂気だ。
特に、ソーホーに集中していたアーティスト達が分散してチェルシーに流れ込ん
できたことも、この地区が変なアーティスティックなパワーを持ち始めた一因か
も知れない。混沌とは違う、そういう感覚は嫌いじゃない。
ニューヨークは大きな街だ。
大きな大陸で、大きな国で、大きな街で、大きな人達が住んでいるから大きいの
かも知れないけど、そんなこととは関係なくそびえ立つビルや看板、四方にドー
ンと張り巡らされた通り、そういうところにパワーを感じる。
私は、そんな大きな街に住むネズミのような存在だ。実際ニューヨークはネズミ
が多いけど、その仲間と同じだ。
こんなこと恥ずかしいだけで自慢にもならないけど、私が本当に住んでいる日
本では私は結構な価値を持っている。
でも、身分不相応な価値で、私は嫌だ。
私はファッションモデルとして、海外のファッションショウを中心に仕事をして
いてヴォーグに載ったこともあるし、ヴォーグニッポンでは私の特集をしてもら
ったこともある。
でも、世界を知れば私より素晴らしいモデルはたくさんいて、ニューヨークの街
角の看板に映るモデルは私よりもずっと格上の人達ばかりで、そんな中で私みた
いなモデルがスター気取りになるなんて、とても小さく恥ずべきことだと思わさ
れる。
特に私よりもキャリアが上のモデルと同居をするようになって、よけいにそれ
を感じるようになった。
末武龍之介が契約した部屋で、ルームシェアをしている。
シェアしているのは私と同業の、シャロン・フェイというモデルだ。
シャロン・フェイは日本出身だけど、チャイニーズハーフで純粋な日本人ではな
い。そして、身長百八十センチを超える長身は、日本のモデルには多いとはいえ
ずインパクトもある。
彼女は、東洋人モデルの理想型のようなタイプでヨーロッパでは大活躍してい
たけど、今は自由にあちこちを旅して歩いているという身分だった。
シャロンがニューヨークを訪れているという噂を聞き、実際に探し出して会うこ
とが出来て、彼女は長期でニューヨークに滞在する方法を考えていたので、思い
切ってルームシェアを申し出た。その結果が、今の状況だ。
モデルの仕事は結構、モデルとしての立ち位置やランク、いわゆる格が様々な
影響力を持っていて、私はシャロンよりのランクが低い。
シャロンは私とは同じ地平線は眺めていないし、同じフィールドに立っているわ
けでもない。
そんな私が彼女にルームシェアを持ちかけるなんて馬鹿げたことだと笑われるか
も知れない。
それでも、私はそれを実行したし彼女はそれを受け入れてくれた。
モデル仲間からシャロンについてはどういう人かは聞いていたけど、実際に同
居を始めて驚かされることばかりだ。
シャロンは私に、ユカリのボディガードをしてあげよう、と言っていたけど、彼
女がどれほど強いかは知らなかったものの彼女が格闘家であるという話は知って
いた。
実際に彼女の強さを知ったのは、アパートメントの住人がドラッグにやられて暴
れていたのを取り押さえたときと、彼女と行ったチェルシー地区内のクラブから
の帰り道で黒人の男に襲われたときだった。
私達を襲った若い黒人の男はクラブからつけてきたんだと思うけど、たぶんア
ルコールかドラッグをやっていただろうし正気じゃない感じがしたけど、シャロ
ンはその男に太い腕で胸を押さえつけられ一気に抱えられそうになったけど、ど
うやったかわからないけど次の瞬間腕をすり抜け男のみぞおちを強く叩き激しい
蹴りを浴びせていた。
男が驚きと衝撃でよろめくと、一気に首を抱えるようにして腕で首と頭を押さえ
込み、おかしな方向にひねると男はそのまま力が抜けたように倒れ動かなくなっ
てしまった。
シャロンはなにかを呟いていた気がするけど、最後の一瞬だけ、やっぱり馬鹿だ
なあ男は、と言って笑っていたような気がする。
そういえば、ドラッグでおかしくなった男を取り押さえたときもなにかを呟い
ていたような気がした。
シャロンは、完全に目つきがおかしくなり怯えたような笑っているような顔の男
を指さし、それも男の目の前で指をクルクルと回し眉間の辺りをその指で突くと
男は鳥のような声を上げて動かなくなり、硬直した男をシャロンは床に押し倒し
肩を踵で踏みつけ、笑っていた。
男は床に倒れた後も怯えたような表情をしていて、シャロンがなにかを呟いた
後、その男は床に額を打ちつけ始めその後やって来た警官に連れて行かれるまで
血を流しながら額を打ち続けていた。
シャロンが恐ろしく強いのは確かだったけど、私に聞き取れなかった呟きが気に
なった。彼女は格闘技だけの強さではなく別ななにかを使った気がする。
そんなシャロンが身近にいるとわかっているから、ニューヨークで生活する不
安はかけらもない。
格下の私相手に友人のように接してくれる優しさも嬉しかったし、なにより美し
い人と一緒にいられるというのはよいことだった。
アパートメントに戻ると、アートなロビーに顎がしゃくれたやけに陽気な男が
いて、アパートメントの住人と思わしきオレンジ色のキャンディーのような眼鏡
を掛けた男とピンク色の髪の女となにか話をしていた。
ナードやギークみたいな感じを匂わす彼らは、やけに話題が盛り上がっているよ
うで顎のしゃくれた男は、サムラーイ、ブラックサムラーイ。タタッキル! と
発していて、思わず何のことかと思ってしまった。
私はそんな彼らを横目に通り過ぎ階段を上って自分の部屋を目指した。
階段を上っている途中、あの顎がしゃくれた男が誰だかわかった気がする。あれ
は映画制作者だった。
このアパートメントはその性格から、少しマニアックだけど著名人が来ることは
あることだ。
部屋の入口まで来て、シャロンになにかお菓子でも買ってくればよかったか、と
後悔したけど今からなにかを買いに行く気にもならないのでそのまま鍵を開けて
部屋に入ると、誰かが来ているようだった。
部屋の奥を覗くと白い肌に真っ黒な髪という印象的なパーツに長身というシャ
ロンの後ろ姿が目に入った。
シャロンは全裸で、右肩から腕の尖端近くまで龍の刺青が踊っている。
彼女はモデルなのに、刺青を入れている。普段は特殊メイク用のドーランで消し
ているけど、実際はかなり広い範囲に墨が入っていて、それも和彫りだからニュ
ーヨーカーでもちょっとは気になるんじゃないかと思う。
シャロンの目の前には椅子に縛られた全裸の白人の女がいて、綺麗なロングの
金髪が乱れていて目のまわりは涙で溶けたマスカラやアイシャドウで黒ずんでい
る。でも、そんなことより真っ赤なラバーボールのギャグを噛まされひどく怯え
たような表情でシャロンを見上げていた。
シャロンはその女に、嬉しそうにダーツの矢を投げつけ、その矢は女の大きな胸
に突き刺さっていった。
私は驚いてシャロンを止めようと声を掛けると彼女は、ニコニコとした笑顔で
振り向き、お帰りなさい。今日は遊んでいます、と答えるので、それって…、と
言いかけると彼女は手にしたダーツの矢を私に見せながら、これを当てて遊ぶの
です。的が大きいとよく当たって失敗しないから良いのです、と無邪気に説明を
始めた。彼女のダーツの矢は針の部分が太めの注射針になっていた。
シャロンは極度のSM愛好者だということは今までの会話や実際の行為で知っ
ていたけど、人間を的にしたダーツは驚いてしまった。
私自身フェティッシュが大好きだけど、彼女は異常なほど好奇心があった。
流暢な英会話と際立っておかしな喋り方になってしまう日本語は、時として彼女
が狂人なのではないかと思わせることがある。
私は彼女に、彼女は友達? と白人の女を指さすと、友達じゃないけど、まっ
たく知らないわけでもないよ、と答え私と白人の女を交互に見ながら、ユカリも
一緒に遊ぶといいです。彼女はエミー・マドセン、と白人の女を紹介した。
名前を聞いてすぐにわかった。やつれてしまっていてすぐにわからなかったけ
ど、エミーという女はダニエル・クリフォード・マドセンという著名なサックス
奏者の孫かなにかで若手の女優だ。
一時期トロントでなにかの映画の撮影に参加していたけど今はアメリカ国内でテ
レビシリーズのドラマなどによく出ている。
シャロンは自分のプレイの相手を選んでいるのか選ばないのか、誰でも相手にし
てしまう気がする。
私はいつかレベッカ・ロメインと一晩中ベッドで愉しめたら幸せだと願ってい
るけど、シャロンはそういう夢みたいなものはない。
そのとき興味を持った相手を独特な間や方法で自分の近くに引きずり込み、思っ
たように動かすことが出来るような気がする。
私は男や女様々な相手と様々なプレイをしたけど、シャロンはその規模が尋常じ
ゃなくて一人で男七人を相手したとか数十人でレズプレイをしたとか、ファンタ
ジーじゃないかというような経験をしている。
シャロンは、ユカリも一緒に遊ぶと楽しいです。早く準備をするといいです、
と言いながらエミーに近づき、彼女はキミジマユカリっていう日本のファッショ
ンモデル。ヴォーグに載ったこともあるモデルだから安心しなよ、というような
ことを英語で告げ、エミーの綺麗な金髪を掴み顔を引き上げるとその顔に股間を
突き出すように向けて一気に放尿してしまった。
ああ、やられた。床掃除! と思ってしまった私は少しおかしいかも知れない。
エミーは嬉しそうに顔面でシャロンのシャンパンみたいなオシッコを浴びて、オ
ーッオーッと声を上げた。
私は、もうしかたがない、とその場で服を脱ぎすぐさま全裸になると全身に油
性のペンで様々な卑猥な言葉が書き込まれた体を晒し、五ドルでファック可能な
日本製便器、メイドインジャパン、と書かれた股間を見せながらエミーに近づき
彼女の汚れた顔をベロベロと舐めてみせると、シャロンは私のお尻を軽く叩き、
落書きを消してないじゃないか、馬鹿な女だ、と英語で言うと日本語で、オシッ
コはしょっぱい、甘いものをいっぱい食べてもしょっぱい、と続けて手を叩いて
喜んでいる。
私はエミーの耳の穴に舌をねじ込むと、まるで性器に出し入れするように刺激
を加えた。
するとエミーは軽く震えながらすぐに感じ始めているようだった。
耳はだいたいの人が性感帯になっていて、特に女性器と同じぐらい耳が敏感にな
る瞬間がある。
例えば、耳の穴の入口の前に出っ張っているか大部分はクリトリスだ。それを噛
んだり舐めたりするとやっぱりエミーは感じているようで、ちゃんと体をくねら
せ声を上げた。
耳が性感帯になるのは特殊な状況下だ。
普段は耳は性感帯にはならない、耳は聞く場所でセックスとは関係ない。
でも、体の回路がセックス用に切り替わると耳も性感帯になる。
私は彼女の耳を刺激しながら小さな声で色々な卑猥な言葉を囁いてみた。
例えば、お前をセントラルパークに連れて行って、全裸のまま犬のように散歩さ
せたらどうなるか、とか、犬と交尾させてその映像をテレビで流したらお前はも
っと有名人になれる、とかそういう内容だ。
囁けば囁いただけエミーは喜んで反応を示すから、かなりの変態なんだと思う。
私がそうしている間もシャロンはエミーの髪を引っ張ったり鼻を摘んだりして
彼女の顔をいじり回し、日本のことわざには穴があったら入りたいというのがあ
るのです。穴を見つけたら押し込みたいというのもあるのです、とかわけのわか
らないことを口走り床に転がっていた緑色の太いビールビンを手にすると注ぎ口
のほうを尖端にして、一気にそれをエミーの性器に押し込んでしまった。
エミーは驚いたように飛び上がるような素振りと大声を上げたけど、シャロンは
今度はビールビンの底を踵で蹴りグイグイ押し込み始めエミーはそのたびに不自
由な口でギャッギャと声を上げた。
シャロンはとても機嫌が良さそうにビールビンを押し込みながら、アメリカ人
はこんなの簡単に出し入れできるのです。ユカリは無理でもエミーは大丈夫、と
言って思い切りそれを蹴飛ばすとその瞬間、ブガーッ! という変な声を上げて
エミーは気絶してしまった。
私は、やっぱりアメリカ人だってダメじゃないか、と思いながらシャロンを見上
げ、気絶したね、と声を掛けると彼女は、疲れて寝ちゃったのかな? 疲れたと
きは甘いものがいいです、と言ってお離れキッチンに向かってノシノシと歩いて
行ってしまった。
遠くで勢いよく冷蔵庫を開け閉めする音が聞こえ、すぐに小さなバケツのよう
なものを抱えたシャロンが戻ってきた。
彼女が抱えていたのはアイスクリームで、チョコレートファッジブラウニー、と
いうひたすらクドそうなフレーバーのものだった。
シャロンは嬉しそうにバケツのようなアイスクリームを持って床に座り、胡座を
かいた膝の内側で容器を抱え込むと、蓋を開けてスクープを勢いよくそれに突っ
込み鉢植えの土を掘るように焦げ茶色のアイスクリームを掬って食べ始めた。
シャロンはアイスクリームを狂ったように掘り出しては口に運び、疲れたら甘
いものがよいのです。ユカリも食べるのです、と言っていたけどしばらくして、
エミーにも食べさせよう、と言ってスクープで掘ったアイスクリームを手に取る
とグチャグチャに汚れたエミーの顔にそれをなすりつけ始めた。
まるで茶色い固形とも液体ともつかないものが白いエミーの顔を茶色く汚してい
き、スカトロのような光景だ。
シャロンは嬉しそうにハミングをしながらエミーの口を塞ぐギャグを外すと今
度は、さあ、食べるのです、と言って恐ろしい量のアイスクリームをスクープに
盛って、エミーの顎を掴み無理矢理開くとそこに押し込んでしまった。
さすがにその冷たさに驚いたのかエミーが意識を取り戻し、喚くように暴れると
シャロンは私に、アイスクリームを食べるとすぐに元気になったのです、と得意
気に語り頬を引っ張ったり鼻を摘んだりして、ひどい顔です。少し休んでるとい
いです、とクスクス笑いながらおもむろに窓に向かい、赤いカーテンをはねのけ
古びてたてつけの悪くなった窓ガラスを開けると一気に風が吹き込んできた。
風が裸の私達を通り抜けていく。
風の向こう窓の先には古いビルが建っており、そこからこの部屋を覗く人はいな
いと思う。
それでも窓を開けた部屋で、全裸でこういうことをするのはとてもスリリングな
ことだと思う。
シャロンは窓辺に立ち外を眺めながら、歩いてる人が見えるねえ、ここからダー
ツしたら楽しそうだなあ、と呟き背中越しに私を呼んだ。
彼女に近づいていくと、すっとこちらを振り返り私に窓の外を向いて立つよう
に促して私の背後にピッタリとくっつくと胸に手を回し、私にはこんなオッパイ
がないからこれが欲しいなあ、とクスクス笑い私の首筋を下から上に向かってベ
ロッと舐めてきた。
その瞬間心地良い感覚がゾクッと背筋を走り、私の肩から胸にかけてシャロンの
長く黒い髪がケープかストールのようにフワリとかかっていてなんとなく一体感
を味わった気がする。
シャロンは、私と一緒に暮らせて楽しい? と唐突に尋ねてきたので私は少し
驚いたけど、憧れていたから…幸せ、かな? と答えると彼女は、フーン、と反
応し私の胸や首、鎖骨の辺りを指先で線を描くようになぞりながら、いつまで一
緒にいられるかはわからないけど…ユカリが楽しければいいね、と呟き胸の辺り
を彷徨っていた指先が私の下半身に落ちていった。
シャロンの指は私の臍やお腹を軽く触れながらそのまま指先だけを中に入れて
きた。
別に濡れているって程じゃなかったけど、ケーキに指を突き立てるようにスルス
ルッと入った感じ。シャロンの指は少し冷たくて気持ちが良かった。
シャロンの指はクルクルと動いて出入り口付近を柔らかく刺激していく。ずっと
奥まで突っ込まれなければ、とかそういう風に思っていた時期があったけど、本
当はそうじゃないということがよくわかる。
シャロンはとてもスキルやテクニックがある。彼女は意識していじっているって
感じじゃなくて、気持ちと指の動きがリンクしているような気がする。
気持ち良いのは同じだけど、それは変にいやらしい感情を掻き立てるのではなく
とてもリラックスというか安心させてくれる。
そういえば、シャロンはどんな場所でもどんなときでも、おかしなぐらいに自
然な流れでセックスにもっていってしまうぐらい入り方がスムーズだ。
彼女の思考がどうなっているのか想像もつかないけど、なにか催眠術みたいな力
を使ってそういう雰囲気を作っているんだろうか。
こうして体を重ねているだけで、決して彼女は口数が多いわけじゃないのに、気
持ちが伝わってくる。
正確には気持ちが入り込んでくるというニュアンスかも知れない。
シャロンは私の中に指を入れて私の性感を掴むように、心に直接触れている気が
する。
シャロンはピッタリ私に張りつくようにして、私にすべての体温を移すかのよ
うに、そして私の耳許に唇を触れさせて、今度はマンハッタンの高いビルで、夜
風を浴びながらファックしたいね。ユカリはそろそろ、高いキャリアとハイレベ
ルなセックスプレイの経験を積んだほうが良いね、と囁き私の首に絡みつくよう
にして、そして私に唇にキスをした。
アイスクリームの味がして、あとを引く甘さだった。
チョコレートファッジブラウニー。
まるで、溶けかけのホテル・チェルシーを丸ごと食べているようだ、と思った。 |
|
|
To Be Continued...
|
|
|