夜明けの鴉が羽ばたくとき

2015年8月末日。
東京ミッドタウンの眼前となる六本木の地で、多くの人達から惜しまれながら約7年にわたる営業活動の幕を閉じようとしているBarがある。

Night Gallery Cafe Crow
http://cafecrow.net/

明けない漆黒の夜はない。

明けない漆黒の夜はない。

漆黒の空間に集う人々、交叉するアートとカルチャー。
そんなコンセプトで活動してきた同店は、いままでに様々な尖端カルチャーに触れ発信し、数多くのアートに彩られてきた。
新進気鋭のアーティストやクリエイターから様々なカルチャーを発信してきたプロフェッショナルに至るまで等しく扱いを受け、この小さなBarという空間に流れる空気を客と共に共有し、その作品性を晒した。

そこは単なるギャラリーではない。
最小単位の社交場であるBarに設けられたギャラリーだ。
世俗的な会話に満ち溢れ、世俗的な目からは好奇と欲求の視線が注がれる。
アーティストやクリエイターにとって、通常とは異なる評価が下される場所になるかも知れない。
客はおもいおもいに作品を眺め感想を述べる。
誰に対して、というわけではなく素直な気持ちを呟く。
アルコールの力で、普段は語らないアートについて言葉が漏れる客もいる。
かしこまる必要のないギャラリーだった。

また、このBarでは性と性カルチャーの多様性にも深く言及していた。
好奇やファッションの観点ではなく、崇敬の念に近い「フェティッシュ」という観点から様々な性や、そこに紐付くカルチャーに焦点を当て続けた。
時に世俗的に、時に学術的に、時に文化的に様々に。
そこで交わされる会話は、夜が更けるほどに深まり、そして誰もが真摯に耳を傾け言葉を繋いだ。
そんな深まるBarの夜に救われた客も数知れず。
つまり、そこで初めて価値観を共有できる出逢いがあった、心を開いて告白できる場ができた、そういうことだろう。

様々な価値観を示し、そこにまつわるかすかな声を繋ぎ、希望を紡いだ「漆黒の夜」のBarがもうすぐ、消える。

店主は「明けない漆黒の夜はない。」そう表現する。
そうか、これは7年にわたる長い夜だったのだ。
夜明けと同時に眠い目をこすりながら、客達は9月1日の朝陽を浴びるのだろう。
一番鶏よりも早起きの、夜明けの鴉が羽ばたくのと同時に。

夜は明け朝が来る、やがて陽は沈み夜が訪れる。
それは繰り返される。
店がかたちを喪っても、そこで生まれたカルチャーは繰り返され磨かれる。
だから、夜明けは始まりだ。

 

―開業した丸翌年からこの店と付き合い始めた。
ここでは多くの人と出逢い、多くのカルチャーに触れた。
その中で醸成された価値観や広がりを見せた知識もある。
Crowとの出逢いは人生に於いて、貴重な接点だったと思う。
様々なものと繋がり視野を広げるための接点だ。
大森店主、深く感謝しています。